コラム
特定技能は受入企業だけで完結できる?
〜Part3:「自社支援」でやるべきこと〜
3回に分けてまとめてきた「自社支援」も、あっという間に最終回。
今回は、受入企業で自社支援をやる条件や、やるべきことを具体的にまとめていきます。
▼目次
【1】すべての受入企業で自社支援は可能?
答えはNOです。
下記のいずれかに該当する企業か、担当者を配置する必要があります。
下記条件のいずれにも該当していない場合は、外国人を支援できる企業とは認められず、登録支援機関へ支援を委託する必要があります。
また、自社支援をする場合は、必ず「支援責任者」と「支援担当者」を社内に配置する必要があります。もちろん社内の誰でもなれるものではありません。
企業の条件
1. 上場企業 (日本の証券取引所)
2. 相互会社 (保険業を営む)
3. イノベーション創出企業(参照リンク)
4.源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある
直近年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表における内容になります。毎年1月末までに新年度分が企業ごとに税務署に提出されています。
企業の条件に該当しない場合
企業の条件に該当しない場合、下記いずれかに該当すれば自社支援が可能です。
1. 支援責任者、担当者になろうとする方が過去2年以内に就労ビザ外国人の生活相談業務に従事したことがある
生活相談業務とは、ゴミ出しや雇用契約内容への問合せ対応など、外国人からの質問への回答業務を指します。
2. 受入企業で過去2年間に外国人の受入れ、管理を適正に行なったことがある
(注意点)
1、2を通して、外国人であれば誰でも良いわけではありません。
技人国や、特定技能などの就労資格をもつ外国人さんの支援のみが実績として認められます。ちなみに特定活動 (特定技能移行準備)も実績として認められます。
就労資格一覧:https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html
留学生や、家族滞在の方などでは認められません。
支援責任者とは?
会社での外国人支援を統括管理する人です。
過去の申請案件では、代表取締役が認められなかったケースもあります。
本事案では、外国人を監督する立場としてみなされました。
支援担当者とは?
実際の支援を進めていく人です。
支援責任者と担当者は兼務可能です!
支援責任者・担当者は、外国人の直属の上司では認められません。
外国人が所属していない部門に属している職員であれば、原則認められます。
【2】支援一覧
支援のためにやるべきことを、まとめます。
実は、内定前から着手すべきことがいくつかあります。
事前ガイダンス
ビザ申請前に雇用条件や、お仕事の内容、実際の就業開始予定日等について説明をします。相互誤解を防ぐために必ず外国人の母国語 (または理解できる言語)で説明しなければなりません。
母国語での説明は通訳を外注しても問題ありません。
外国人が誤解なく、従事する業務などについて理解できることが第一です。
実施方法は対面かオンラインのいずれかになります。
*N2以上の資格を保有している場合は、日本語での実施も審査上認められるケースがあります。
入国、出国時の送り迎え
現地から採用する場合は、空港まで迎えにいきます。会社や住居まで電車やバス(公共交通機関)、車などで送る必要があります。
出国する際にも、送り迎えが必要です。
物件・契約のお手伝い
外国人が住む物件の契約に同行・説明をしたり、物件を会社名義で借りたりといった手続きが必要です。もちろん会社名義で契約した場合は、賃料を上限に給与からの控除も可能です。
外国人自身が住みたい物件を決める場合もあります。
その際は契約に同行したり、契約内容を説明したりといったサポートが必要となります。
物件以外にも、給与振込用の口座開設、携帯電話、水道・電気・ガスの契約などの契約手続きの支援もします。
・銀行によっては、残っている在留期間が規定上短いと開設できない場合がありますので、早めに手続きが必要です。
・携帯電話は現地からもちこんだ端末ではSIMが使えない場合もあります。
・シェアハウスであればライフラインの契約が不要になるため、特定技能外国人の物件としては相性が良いです。
公的な手続き
住民登録取得などの公的な手続きのために、役所へ同行する必要があります。
日本人との交流
地域主催のお祭りなどの行事や交流イベントへの参加を勧める必要があります。
日本語を学習する機会を提供する
オフライン・オンライン問わず、日本語を学習する機会を提供します。
余談ですが、特定技能「介護」の場合は、介護福祉士を取得するための学校への通学支援をしているケースをよく聞きます。
相談対応
会社や生活で困っていることなどにアドバイスしたり、指導したりします。
必要に応じて外国人の母国語で回答が必要です。
転職支援
受入企業の人員整理などの都合によって、契約を解除、更新しない場合に転職先を探すサポートが必要になります。
外国人がもっと賃金が高いところで働きたいなどの、自分の都合で退職する場合には支援は不要です。
定期報告
3ヶ月に一度、入管へ報告をします。
書類を作成して提出することになっています。
外国人が入管に提出した雇用条件書通りにお仕事ができているか、給与をもらえているかについて報告が必要です。
届出を行なった場合は、監査が入る等、今後の特定技能外国人の受入れに悪影響を及ぼします。
ビザ更新 (在留期間更新許可申請)
外国人の在留カード記載の在留期間を更新する手続きが必要です。
在留期間を満了する日3ヶ月前から申請することができますので、なるべく早く申請手続きをすることをお勧めします。
申請してから2週間〜1ヶ月程度で許可が下りるケースが多いです。
在留期間が満了するギリギリで更新手続きをすると、見た目の在留期間を超過して審査が進む場合があります。この場合、銀行によっては新しいカードを受け取れるまで口座が使えなくなったり、役所での転入出ができなくなるリスクがあります。
在留カード記載の在留期限を超過して審査が進んでも、それはオーバーステイではありません。
期限前に申請受理が完了していれば、特例として2ヶ月間在留期間は延長される運用となっており、
必ずこの2ヶ月の間に審査結果が出ますので、安心してください。
【3】やることが多すぎる・・・
ここまで読んだ方の9割の方が思ったのではないかと拝察します。
当然です。本業もあって、こんな仕事までできないよという意見が大多数でしょう。
自社支援をやる意義については、Part2でまとめた通りです。
実は支援業務、すべて自社でやらなくても良いのです。
【4】支援を部分的に外注することも可能
必ず自社でやらなければならないのは、「定期報告」だけ。
登録支援機関に全ての業務を委託しない場合に絶対に自社でやらなければならないのは、定期報告ただ一つです。
自社で対応できない支援業務を部分的に、登録支援機関に委託することは可能です。事前ガイダンスだけ、空港への送り迎えだけ、などまずは自社で確実に対応できる支援業務から始めることもできます。
やるべきこと:定期報告
まかせられること:支援業務 (部分的委託でもOK)
→自社でできること・できないこと をまとめ、後者を外注する
→安定的支援の実現が可能
【5】まとめ
ここまで読んでいただいて、自社支援を半ばゴリ押ししているように思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし前提はコストを抑えることでも、自社にナレッジを積み上げることでもありません。
もっとも考えるべきは、会社で働く外国人が不安なく働ける環境づくりができるか、そもそもやろうと思えるか。にあると思います。まずもって難しいと断言できるなら、真っ先に登録支援機関に委託しましょう。
「自社でやれるか、考えてみようかな?」
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自社支援からやや話が逸れてしまいましたが、今回は最終回。
次週はまた別のトピックについてまとめていきます!