コラム
特定技能は受入企業だけで完結できる?
〜Part1:自社支援の定義と浸透しない背景〜
誤読を避けるよう、表現には細心の注意を払いますが、まず僕個人としては、登録支援機関が不要であると言いたいわけではありません。
特定技能外国人を雇用するために現在活用できるが一般的には広まっていない方法や、取りうる選択肢を共有することで「それならうちもやってみようかな」という企業の第一歩目の背中を押す一つの材料になればという思いのみです。
すべては弊社のミッションである「NO BORDER 不合理な障壁なき社会の実現」が目的です。
少しでも企業様の意思決定の助けとなれましたら、嬉しい限りです。
▼目次
1. Part1 まえがき
「特定技能の外国人を雇用する」=登録支援機関が必須
介護や外食業など様々な分野で特定技能の外国人を受け入れている企業から今なお共通して言われることです。
そもそも必須だと思っているからこそ疑問にすら思っていなかったり、必須ではないことは知っているけど、それ以上の正しい情報がないため現状維持(支援委託)を続けていたり。企業ごとに様々な事情があるにせよ、特定技能制度が始まって5年が経とうしている今でも「自社支援」という言葉が浸透していない現状です。
まだまだマイナーである「自社支援」について、今回は受入企業の特定技能雇用の一つの選択肢として理解が深まるような記事にしたいと思っています。
一つの記事としてまとめるには、かなりの分量になってきますので、Part1〜3に分けて解説していきます。
Part1:自社支援の定義、浸透しない背景
Part2:自社支援のメリット、デメリット
Part3:自社支援でやるべきこと 〜手続+支援〜
2. 自社支援の定義
簡単にいうと、受入企業自ら、雇用している外国人の支援をすることを指します。日本人従業員であれば、労務的な内容や仕事上発生する不明点などについて企業が対応するのは至極一般的だと思います。
ただし、異国で生まれ育った外国人を雇用するとなると、日本人とは全く違う視点での質問や考えから生まれる疑問がでてくるものです。
住む場所はどうしたらよいのか?ゴミ出しの分別、交通ルール、仕事上の悩みなど、僕たちが海外で働くことをイメージすれば山ほど質問がでてくるのは容易に想像がつくと思います。
不安なことが沢山ある彼ら/彼女らの質問に答え、お互いの同意の下気持ちよく1日でも長く働いてもらうための支援を受入企業自らが行うことをここでは「自社支援」と定義します。
3. 浸透しない背景
〜特定技能は技能実習の延長線上にある〜
そもそも自社支援がなぜ広まっていないのか?
個人的な見解ではありますが、大きな要因は、特定技能制度の特徴に起因しています。
特定技能制度では、大別すると二つの経路からくる外国人が採用されます。
-
技能実習を修了した外国人
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各分野の特定技能試験に合格した外国人
厳密にいうと細かい条件が付帯されていますが、まずはこの2つのルートで外国人は特定技能制度を活用できると思ってください。
もう少し細かくみていきます。
今日本には、130,915名の特定技能外国人が働いています。
各ルートの内訳は以下の通りです。
1. 技能実習を修了した外国人: 96,356名 (73.6%)
2. 各分野の特定技能試験に合格した外国人: 34,078名 (26.0%)*2022年12月末「特定技能在留外国人数」/出入国在留管理庁 第7表より抜粋
つまり、技能実習を終えた外国人がエスカレーター式に特定技能へ切り替わるケースがほとんどであるというのが実情です。
なぜエスカレーター式であると、登録支援機関による支援が一般的なのかと疑問に思われるでしょう。これには「監理団体」の存在・役割が大きな影響しています。
監理団体とは、簡単に言うと、技能実習版の登録支援機関です。そして監理団体は多くの場合、登録支援機関も運営するケースが多いです。
よくあるケースが下記のような流れです。
A社は、監理団体として技能実習生Bさんの支援をします。Bさんの実習期間が終了すると、A社は登録支援機関として、特定技能に切り替わったBさんを引き続き支援していきます。
こういったスキームで雇用を続けている企業が今なお多いからこそ、自社支援という方法があること自体を知らない=登録支援機関に委託するものという認識になっているケースが多いと思われます。
4. Part1 あとがき
今回は、そもそも自社支援とは何か。なぜここまで自社支援という言葉の認知が得られていないのかについてまとめました。
次回Part2では、自社支援を検討している受入企業や現在の登録支援機関業務との比較をしやすいようメリット・デメリットについてできる限り実務に即した内容をまとめてみます。